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京都地方裁判所 昭和59年(わ)56号 判決

国籍

大韓民国

住居

福井県武生市芝原四丁目六番一五号

会社役員

松原こと孫主憲

一九四七年七月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官加澤正樹出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金八万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福井県武生市芝原四丁目六番一五号において「ジャンボホール」の名称でパチンコ遊技場を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  昭和五六年分の総所得金額は、六四二二万二九七九円であり、これに対する所得税額は、三三二六万六九〇〇円であるのに、収支に関する記帳を行わず、所得の一部を銀行借入金の返済に充てるほか、仮名の預金として留保するなどの不正の方法により所得を秘匿したうえ、同五七年三月一五日、同市中央一丁目六番一二号の武生税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が六〇〇万円、これに対する所得税額が六一万三〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告を提出し、もって右不正の行為により、昭和五六年分の正規の所得税額との差額三二六五万三六〇〇円を免れ

第二  昭和五七年分の総所得金額は、一億一〇〇六万四三四四円であり、これに対する所得税額は、六六七五万一七〇〇円であるのに、収支に関する記帳を行わず、仮名の預金として留保するなどの不正の方法により所得を秘匿したうえ、同五八年三月一五日、前記武生税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一一五〇万円、これに対する所得税額が二三二万一五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって右不正の行為により、昭和五七年分の正規の所得税額との差額六四四三万二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  大蔵事務官作成の各脱税額計算書

一  検察官作成の電話聴取書

一  大蔵事務官作成の各証明書

一  大蔵事務官に対する吉田勝彦、松原清一こと孫鎮宅、松原憲一こと孫致憲、松原正憲こと孫正憲、松原陽子こと鄭養順、市橋彦治の各質問てん末書

一  検察官に対する金永洙、松原清一こと孫鎮宅、松原憲一こと孫致憲、松原正憲こと孫正憲、松原吉城の各供述調書

一  大蔵事務官作成の写真撮影報告書及び各臨検捜索てん末書並びに各差押てん末書、各領置てん末書

一  大蔵事務官作成の各現金預金有価証券等現在高確認書及び各同現在高検査てん末書並びにたな卸商品等在庫高確認書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  被告人の検察官に対する各供述調書

(法令の適用)

被告人の前記起訴状第一、二に記載の各所為は、いずれも所得税法二三八条に該当するが、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条、一〇条により犯情の重い右第二記載の所為に対する罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算したその刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金二八〇〇万円に処することとするが、被告人においては、既にそのほか脱税額等につき修正申告を了したうえ、各種過算税等を含めて完納していること等の情状を勘案して、右懲役刑については刑法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 廣田民生)

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